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    ザクッとわかるZEB(2)日本のZEBは「ZEB Ready」から

    2017年2月、環境共創イニシアチブは「ZEB設計ガイドライン」をウェブサイトで公開した。その内容は、まずはZEB Readyを目指すものとなっている。今回はZEB Readyを含めた、日本のZEBの考え方を整理したい。

    ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)が一般に広く知られるようになったのは、2008年の北海道洞爺湖サミットからだ。この会議でIEA(国際エネルギー機関)は、各国政府にZEBの建設の支援・促進を勧告し、導入の目標設定を求めたことがニュースになった。

    これを受けて日本政府は、09年に「ZEBの実現と展開に関する研究会」を開催。同時にZEBを自社開発する企業も増え始めたが、その定義はそれぞれ異なり、評価方法の明確化が求められた。

    そこで、12年に空気調和設備委員会のZEB定義検討小委員会でZEBの定義や評価方法の検討が重ねられ、15年にはその評価方法や定義に基づき、経済産業省資源エネルギー庁によってZEBロードマップがとりまとめられた。


    ZEBロードマップ(資料:環境共創イニシアチブ「ZEB実証事業 調査発表会2016」)

    「先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」。これが日本におけるZEBの定性的な定義だ。

    さらに、ZEBの実現や普及に向け、3段階の定量的要件を設け、「ZEB」「Nearly ZEB」「ZEB Ready」を定義づけた。日本ではこれらを広義にZEBと捉えている。


    ZEBの定義。高層の大規模建築物などでは屋上面積が限られ、エネルギーをつくることに限界がある。これらを勘案し、建物の実情に応じてZEBを目指すことができるよう、ZEBの概念を拡張した(資料:環境共創イニシアチブ「ZEB実証事業 調査発表会2016」)

    こうした日本版ZEBの定義の確立と併せて、環境共創イニシアチブは17年2月、設計実務者向けに中規模事務所編と小規模事務所編の「ZEB設計ガイドライン」を公開し、その後、WEBプログラム(建築物省エネ法)計算シートも公開した。

    特徴としては、ZEB Readyを実現するための設計や技術採用の考え方などをモデルケースに基づき紹介していること。新築ビルのZEB Ready化が、日本のZEB普及の第一歩となる。

    ZEB設計ガイドラインは、今後、老人ホーム・福祉ホーム編、スーパーマーケット編を作成していく。学校編については、WEBプログラムの作成を予定している。

    また、ビルオーナーなどに向けたパンフレット「ZEBのすすめ(事務所編)」も公開している。


    設計者向けの「ZEB設計ガイドライン」(左)、ビルオーナーなどに向けたパンフレット「ZEBのすすめ」(右)。いずれも環境共創イニシアチブのホームページから無料で入手可能(資料:環境共創イニシアチブ)

    ZEBの定義は、厳密すぎると、建物の用途や規模などの物理的条件でZEBの実現が限定され、実現不可能な空論とみなされてしまう。住宅と比較してビルは100%以上の省エネルギー化が難しい面もある。

    定義の着地点は、当初の目的にかなうものでありながら、設計者がZEBを実現する可能性を実感できる、現実味のある目標が求められる。その点、「ZEB設計ガイドライン」では、ZEB Readyであれば汎用的な省エネ技術を組み合わせることで実現が可能で、省エネ基準相当のビルに比べて約10%の建築費アップで建設できると試算している。

    日本のZEBは、まずはZEB Readyを目指すことからスタートする。

    (日経アーキテクチュア「省エネNext」の2017年3月15日公開のウェブ記事を転載)


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