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省エネ基準適合義務化に慎重論相次ぐ 対象拡大に向けて国交省審議会で議論スタート

国土交通省は住宅・建築物の省エネルギー基準への適合義務化の在り方などを決めていくための議論を始めた。2018年9月21日に社会資本整備審議会の建築分科会・建築環境部会の合同会議を開催。会議の席上、住宅の省エネ基準適合義務化を中心に一定の配慮を求める声が相次いだ。 

政府はエネルギー基本計画で、2020年までに新築の住宅や建築物の省エネ基準適合義務化を段階的に進める方針を示した。現行の建築物省エネ法では、床面積2000㎡以上の大規模な非住宅建築物を新築する際に基準への適合を義務付けており、この対象拡大などを検討する。 

国交省は会合で、省エネ対策を巡る現状を説明。2017年度の省エネ基準適合率が床面積2000㎡以上の住宅で60%にとどまる点を示した。さらに、従業員規模4人以下の住宅事業者では、一次エネルギー消費量や外皮性能を計算できない割合が約6割に及ぶとの調査結果も明らかにした。 

併せて、国交省が地方の中小規模の住宅事業者に聴取した結果も紹介。「伝統的構法の住宅は省エネ基準への適合が困難」「確認審査日数が延びる」 といった声が寄せられた。 

住宅における省エネ対応の費用対効果の試算結果も示した。床面積120㎡の戸建て住宅の場合、建設時の追加コストが約87万円。光熱費削減による初期コストの回収期間は約35年に及ぶ。集合住宅でも初期コストの回収に20年程度かかると試算した〔図1〕。

 

図1

省エネ基準に適合させるために必要なコストの試算結果。省エネ基準地域区分は6地域を想定。総建設費は2015年度住宅着工統計の工事予定額から算定した(資料:国土交通省)

 

「コスト増で購買意欲が下がる」

会合では、委員から適合義務化を慎重に進めるよう求める意見が続出した。例えば、日本建築士会連合会の中村勉環境部会長は、「画一的に押し込めることで建築文化が閉鎖的になるのではないか」と懸念を表明。不動産協会環境委員会の鈴木康史委員長は「消費税増税を控えており、コスト増になると消費者の購買意欲が下がる懸念がある」と指摘した。 

一方、住宅の省エネ性能向上の必要性を強く訴える意見も出た。慶応義塾大学の伊香賀俊治教授は、こう説いた。「注文住宅だから全て個人の自由という発想ではなく、寒い家に住んだ場合の健康リスクを意識してもらうことが大切だ。医療費を含めた社会的な負担にもつながってくる」 

2018年10月29日に開催される次回会合では、省エネ性能の向上を図るうえでの課題などを洗い出す。省エネ性能向上に向けた制度の方向性を示す報告は2019年1月にまとめる予定だ。

 

出典:日経アーキテクチュア、2018年10月11日号 p.11 ニュース 時事

記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

(日経 xTECHのウェブ記事を抜粋転載)


 

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