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太陽光発電と蓄電池で効率的に自家消費 YAMABISHI海老名工場

 インバーターなど電源装置を開発製造するYAMABISHIは2019年5月、自家消費を目的とする太陽光発電設備を海老名工場に導入した。既存建物の改修となる。新たに開発した蓄電システムと組み合わせ、蓄電池の有効活用を目指す。

 

 50kW以上の事業用の太陽光発電は、全量がFIT(固定価格買い取り制度)の買い取り対象になっている。しかし買い取り価格は年々下がり、国はFITの終了を検討している。売電のメリットが減る一方でクローズアップされるのが、太陽光発電の自家消費だ。

 

 YAMABISHI(東京・大田)は2019年5月に海老名工場を改修し、自家消費を目的とする太陽光発電システムを導入した。既存の工場棟(1998年完成)の屋根上に162kWの太陽光発電パネルを設置。100kWのパワーコンディショナー(以下、パワコン)、426kWhの蓄電池と組み合わせた。

 

 同社は13年度から学校や公共施設などの産業向けに蓄電システムの販売を始め、19年度までに200件近い納入実績を重ねてきた。海老名工場では、新開発した蓄電システム「SmartSC」を組み込んで効率的な運用を目指している。

 

YAMABISHI海老名工場の屋根上に設置した太陽光発電パネル(写真:YAMABISHI)

 

工場の内部。改修工事では工場内の空調設備も一新した(写真:守山 久子)

 

 SmartSCの特徴は、自家消費の制御を最適化する機能を備えていることだ。

 

 「一般に、蓄電池を活用して自家消費する場合には大きく3つの効果がある」と、YAMABISHI営業部の若竹勇希東京営業所サブヘッドは指摘する。1つ目は、電力使用量(電気代)の削減だ。太陽光による発電量のうち余剰分を蓄電池に充電し、夜の消費に回す。

 

 2つ目は電気基本料金の削減だ。使用電力が一定値を超える場合に放電してピークカットし、電気基本料金を設定する際の根拠となる最大需要電力を抑える。3つ目は停電時のバックアップだ。停電時には自律運転に切り替えることで必要な電気を賄い、BCP(事業継続計画)対策に結び付ける。

 

 ただし、「条件によって余剰分が変動するため、一般に、蓄電と放電のバランスを最適化して蓄電池の容量を最大限活用することは難しい。SmartSCでは発電量と消費量の推移を予測することで、蓄電池をこれまで以上に活用できるようにした」(若竹氏)

 

 具体的には、気象庁の天候予測データと電力のデマンド予測を組み合わせてその日の余剰分を推測し、これに基づいて蓄電と放電を行う。蓄電池の充電率をできるだけ100%に近い状態に保ちつつ、余剰分を捨てたり必要な蓄電量を確保できなかったりという状況を減らすのが狙いだ。余剰分の推測は家庭用の蓄電システムでは活用例があるが、産業用システムでは同社が初とのこと。

 

工場内の一画に設置した蓄電システム(写真:守山 久子)

 

折板屋根に600枚のモジュール

 

 およそ600枚のモジュールを並べた太陽光発電パネルは、トリナ・ソーラー・ジャパン(東京・港)の製品を採用した。太陽電池モジュールの出荷量の累計が世界中で50GWという実績や、コストパフォーマンス、アフターケアなどを総合的に勘案して選んだという。工事は、既存の折板屋根の凸部にパネル用金具を設置したうえでモジュールを取り付けた。

 

 設置に際しては、法的な手続きを2つ要した。まず蓄電池盤が海老名市火災予防条例の第44条に該当するため、「火災の発生のおそれのある設備等設置届出書」を所轄消防署に提出した。蓄電システム設置完了後に検査を受けて承認を得ている。

 

 また、50kW以上のパワコンを設置して運用する場合には自家用電気工作物扱いとなる。経済産業省(関東東北産業保安監督部)に、電気主任技術者の選任と保安規程に関する届け出も提出している。

 

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太陽光発電パネルの屋根設置工事。折板屋根にクランプを取り付け(a)、防水シリコンを施工する(b)。直流延長ケーブルを配した(c)後に、太陽光モジュールを設置する(d)(写真:福山)

 

 19年5月に蓄電システムを設置して以降、海老名工場の電気代は45%減った。「これまでも使用電力をピークカットする取り組みをしてきたが、さらに空調設備の更新、太陽光発電の導入、蓄電池を用いたピークカットによる電気基本料金の削減という3つを組み合わせた効果だ。海老名工場での運用を通してシステムの精度を高め、他社への提案に結び付けていきたい」と若竹氏は話す。

 

 海老名工場の蓄電システムの運用データは可視化し、事務棟入り口に置いたパネルなどで表示している。その日の太陽光による発電量、工場内設備の電力使用量や蓄電池の充電量、買電量の変化などをグラフ化した。詳しくない人が見ても、太陽光発電の利用状況が直感的に分かるような見せ方を工夫している。

 

 「20年7月のように雨天が続いたときも、気温がそれほど上がらないために空調の使用量も減っていた。発電量と使用量がいずれも下がるため、電力使用量に対する太陽光発電の比率は他の月とそれほど変わらなかった」(若竹氏)といった状況分析を容易にできたのも、見える化の効果だ。

 

見える化の画面。ホーム画面で太陽光発電、蓄電池、パワコン、使用設備などの関係を示している(図:YAMABISHI)

 

エコグラフでは、太陽光発電と蓄電池の利用内訳、買電との比率などが直感的に分かるように図示(図:YAMABISHI)

 

建築概要

YAMABISHI海老名工場

 

所在地:神奈川県海老名市

構造・階数:鉄骨造・地上2階建て

延べ面積:1398m2(工場棟)、839m2(事務棟)

発注者:YAMABISHI

完成:2019年5月(太陽光発電システムの設置)

 

YAMABISHI営業部の若竹勇希東京営業所サブヘッド(写真:守山 久子)

 

(日経クロステック「省エネNext」公開のウェブ記事から抜粋)

 

 


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