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ZEBのエネルギー削減率、実績値が設計値を大きく上回る

環境共創イニシアチブ(SII)は、2018年度に実施状況報告を行ったネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業を対象に、申請目標(設計値)の達成率と実績データを分析している。分析対象は、経済産業省と環境省のZEB実証事業で、1年間の運用データ報告を行った事業の計33件。なお、経産省ZEBはエネルギー計算手法が「平成25(2013)年基準」以降の事業を対象とした。

測定期間は2017年4月1日~2018年3月31日。対象建築物全体のエネルギー使用量(電力、ガス、灯油)、およびBEMS(ビルエネルギー管理システム)によるエネルギー計量データを集計し、分析した。経産省の補助対象は、延べ床面積2000m2以上の民間業務用施設。環境省の補助対象は、延べ床面積2000m2未満の民間業務用施設と地方公共団体の建築物(面積要件なし)。

分析対象33件の基準値、設計値、実績値、それぞれの総量をみると、年間1次エネルギー消費量は、設計値109TJに対し実績値は72TJとなった。基準値に対する実績値の削減率は、設計値に比べて13ポイント以上高い73.5%だった。

 

分析対象33件の設計値と実績値、それぞれの年間1次エネルギー消費量の総量を比較した(資料:環境共創イニシアチブ)



達成の要因を事業者に調査(複数回答可)したところ、経産省ZEBの実証事業では「エネルギー管理が適正」が最も多く、該当率は81.5%だった。次いで「省エネ意識の高揚」(該当率74.1%)を挙げる事業者が多かった。

事業者からは達成の理由として、「エネルギー計測の見える化が省エネ意識向上につながった」という声や、「空調切り替え時期や室温の設定値の調整、照明運用設定が奏功した」「省エネ会議を実施し予実管理を徹底した」などの報告があった。

設計値を達成できなかった実証事業は1件(環境省ZEB)のみ。照明、空調、給湯の1次エネルギー消費量が設計値を上回った。
 

経産省ZEBの年間1次エネルギー削減量の達成率(実績値/設計値)と達成の要因(資料:環境共創イニシアチブ)


 

環境省ZEBの年間1次エネルギー削減量の達成率(実績値/設計値)と達成・未達成の要因(資料:環境共創イニシアチブ)



調査分析発表が行われた「ZEB実証事業調査発表会2018」で、経産省資源エネルギー庁は、ZEB案件が少ない1万m2以上の大規模建築物について、定義や評価方法の見直し、Webプログラムの未評価技術活用の可能性などを、ZEBロードマップフォローアップ委員会で検討中であることを明らかにした。1万m2以上の建築物は、新築の非住宅建築物全体のエネルギー使用量の35%を占めており、大規模建築物のZEBの実証と、運用データの蓄積・分析・公開は急務といえる。
 

新築の大規模建築物(1万m2以上)は非住宅建築物全体のエネルギー使用量の35%を占める(資料:資源エネルギー庁)



設計実務者向け「ZEB設計ガイドライン」の学校編、ホテル編は、2018年度中に制作・公開する予定だ。公開済みのZEB設計ガイドラインは、2018年10月31日時点で延べ9782人がダウンロードした。

資料はSIIのホームページからダウンロードできる。


(日経 xTECH「省エネNext」公開のウェブ記事を転載)


 

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